eastern youthとkurayamisaka。極東最前線 106を目撃した忘れられない夜のこと

音楽

今年のフジロックは久々に興奮するラインナップで、本当に楽しみだった。

いざタイムテーブルが発表されると、やっぱり観たいバンド同士の被りがちょいちょい。

 

その中でも初日、フジロックの幕開けを飾るステージで、FIELD OF HEAVENでトリプルファイヤー、RED MARQUEEでkurayamisakaがドン被り。

めちゃくちゃ迷ったけど、大好きなトリプルファイヤーの晴れ舞台はぜひ見届けたくて、会場へ着くなりHEAVENに向かった。

 

普段からライブにはちょいちょい足を運んでいても、フジロックで見る大好きなバンドはやっぱり格別だった。

ここでしか観れない山下達郎カバーだって聞けて、今でも思い出すと少しうるっと来るような最高のライブ。

 

被って観れなかったkurayamisakaは、いつか必ず観に行こうと心に決めていた。

それが早速叶ったのは、フジロックのタイムテーブル発表から本番までの間に (いや、正確には覚えてないけど)、極東最前線開催の発表があったからだった。

 

極東最前線 106 〜暗闇でしか聴こえぬ歌がある〜 / 渋谷 CLUB QUATTRO

eastern youthがゲストを迎えて開催している自主企画『極東最前線』

そもそもバンドをノンストップで続けながら、その自主企画を100回以上も開催してるって時点で既に異常。

 

今もなおベストを更新し続け、常に数多のロックバンドの憧れとして鎮座し続ける最強のバンド、eastern youth

正直なところ、大学生くらいまでいわゆるメジャーシーンの音楽しか聞いたことのなかった僕は、その存在を知らなかった。

 

ただ、トリプルファイヤーをきっかけにインディーシーンに興味を持ち、そこから色々なバンドを聞くようになるうちに、どこへ行ってもその存在が語られることでその名前を知った。

いわゆる”本物のロックバンド”に出会ってしまった。

 

別にテレビに出てるバンドをどうこう言いたい訳じゃないけど。

いつだってフルパワーで、魂を震わせ続けているその姿を観たら、僕が今まで知ってた”ロックバンド”ってなんだったんだろう、って気持ちにすらなる。

 

そんなライブをもう40年近く続けてるなんて、本当に狂気の沙汰だと思う。

そりゃあ、真っ直ぐな気持ちで、心を持ってギターをかき鳴らすロックバンドなら、みんな心を奪われるだろうと思う。

 

バンドをやってない僕ですら、その演奏を見てるだけで膝から崩れ落ちそうなほどのド衝撃を受けるんだから。

音楽に魂を震わされてステージに立つことを選んだ人たちは、その偉大さをより身近で感じているんだろう。

 

暴れ回るドラムとベースにギター3本の轟音ロック、kurayamisama

開演時間ピッタリの17時に登場したのは、今回の極東最前線のゲストであるkurayamisaka

「まさか自分が極東最前線に呼んでもらえる日が来るなんて。eastern youthの皆さん、ありがとうございます」

 

そう語るのは、ブッチャーズのTシャツを着て、バンドのセンターに立つギターの清水さん。

演奏中は何かを噛み締めるような表情でギターを弾いては、爆裂なフレーズを弾き倒した後でギターを頭上に掲げるポーズにこちらも思わずガッツポーズを取ってしまう。

 

kurayamisaka、音源を聞いて想像してたよりも何倍もずっとずっと熱い。

音源で聴く限りは、平熱感を持ったジャケットや内藤さちさんによる女性ボーカルからは、どこか淡々とした雰囲気を感じる。

 

ただ、中身は決してそうではない。ロックバンドが持つ、こんちくしょうって気持ちを確かに感じる曲と演奏の数々。

それがないバンドって、ただただ綺麗だけど。そういう上手いバンドっていっぱいいるけど。シティ感のあるバンドって沢山あるけど。

 

kurayamisakaはそうじゃない。静かに、だけど確かに燃え続ける蒼い炎のようなロックバンドだった。

 

軽やかさを持ちながらも、迫力を持って暴れ回るドラムフレーズや、曲を激しく口ずさみながら弾き倒すベース。

そしてギターボーカルを含めた3本のギターによる轟音が渋谷クアトロに響き渡る。

 

クアトロは去年だったか、グソクムズのワンマン以来。

nestやWWW、リキッドルームにはちょいちょい行っても、不思議と来る機会の少ないライブハウス。

 

天井が高くてステージは広く、のびのびと演奏をするkurayamisakaのメンバーは気持ちが良さそうだった。

何よりみんな、すごく楽しそうにライブをしてる。

 

ドラムもベースも歌いながら、ギターボーカル意外のギター2人は顔を突き合わせて演奏をする瞬間も。

 

クアトロ、迫力のあるライブが観れていいライブハウス。

いつ観たって、下手にある巨大な柱は邪魔だけど。あれはどうにかならんのかとか、柱は柱で建物の都合上あったっていいけど、透明になったらいいのにとか思うけど。

でも、これ邪魔だなって思いながらも、その記憶すらライブの記憶に刻み込まれる、そんなライブハウス。

 

「今日のことは一生忘れません。ありがとう、eastern youth」

イースタンへの愛を節々からひしひしと感じる演奏と最後のMCを以って出番を終えたkurayamisaka

 

ああ、最高にかっこいいバンド、ライブだった。

軽やかに調子よくやる、どこか余裕とシティ感のある澄まし顔のロックバンドって最近はいっぱいいる。

 

初めて音源を聞いたとき、このバンドも今よくある、流行りのそんな感じなのかなと少し思ってた。

ただ、2曲も聞いてみれば、彼らは全く以ってそうではないとすぐに気付く。kurayamisakaは、全力で魂を震わせ続ける本物のロックバンドだ。

っていうか、そうじゃなかったらeastern youthだってゲストに呼んだりしないだろう。

 

2年ぶりのeastern youth、相変わらずの超絶爆音に立ち尽くす

eastern youthを観るのは2年ぶり。23年の6月9日に代官山UNITで観た、サニーデイ・サービスとのツーマン以来。

 

この日は最初にサニーデイが出てきて、次にイースタン。

開場を出ればMOROHAのアフロさんがフライヤーを配っていて、これだけ売れても現役のフライヤーマン!と震えたことをよく覚えてる。

そのときに貰ったアルバムのフライヤーは今でも玄関に飾ってある。

 

久しぶりのイースタン、転換中に1人のスタッフさんがドラムを叩いてギターを弾き、ベースまでをも弾いてサウンドチェック。

そのときに鳴ったギターの時点で圧倒的に確固たる、それでしかない個性を持った吉野さんサウンドで、ああ、そうだ、これだよこれ!!と既に胸が熱くある。

 

kurayamisakaにはギターが3人いて、その轟音サウンドが超絶かっこよかった。

次ぐeastern youth、スタッフさんによるサウンドチェックの時点で、吉野さんの愛機からさっきまでのギター3本分くらいの爆音が出た瞬間、流石に音がデカすぎて笑ってしまった。

 

そうだ、これだよこれ。鼓膜を突き刺すような鋭くて、そしてバカでかい音に、2年ぶりにeastern youthを観ることへの胸の高鳴りがもう抑えきれなくなった。

 

暗転してメンバー登場、爆音のアンサンブル。

飛び散る唾。魂を感じる歌とバンドの演奏に、いやいや、いつだってこんな熱量で、しかもそれを40年近くも続けてるって、と思わず笑みが出てしまう。

 

本当に凄まじいものを見たときって涙が出るときもあれば、なんだかもう笑ってしまう、笑うしかないときがある。

そういう意味で言えば、eastern youthのライブではいつだって大爆笑をしまくってる記憶が沢山。

 

そりゃあレジェンドって言われるわ。勝手に伝説にするなって感じかもしれないけど、それを何十年も続けてる時点でレジェンドすぎるんだって。

 

どう転んだって、俺は俺。

ソンゲントジユウ。その前にMCで吉野さんが話してた、憧れのミュージシャンにはなれなかった話。

憧れのミュージシャンにはなれなかったけど、なれなかったから、どうしようもなく自分でしかない自分を認めて生きることを覚悟した話、そしてその歌詞。

 

これまで音源で何回だって聞いてきて、ライブでだって何度かその演奏を見たソンゲントジユウ。

いつ観たって、決して派手な照明を使わずに、魂むき出しの真っ向勝負で演奏されるその曲に、巨大な魂の塊がぶっ飛んでくるような迫力を感じて涙が出る。

 

そう、どうしようもない俺だって、俺のことを認めて愛して生きていかないと。

認めて愛して、どうしようもなく俺でしかない俺にしかない魂の尊厳を誇りに持って生きていくんだ。

 

腕を組むってポーズは自分を強く見せるもの、そう思ってた。

実際、そういう側面はもちろんのことあると思う。

 

ただ、人にそう見せたいと思ってない瞬間だって、腕を組んでしまうときが僕にはあって。

「腕を組むっていうのは、自己防衛。自分の心をまだ相手に許してないときに、無意識に人は胸の前で腕を組むんだって」

 

その日初めて会った人とお酒を飲んでたとき、そう言われてなんだかハッとした。

深層心理にそんな感覚があるんだよと言われれば、そんな気がしないでもない。

それは、過去に自分が腕を組んでいた色んなシチュエーションを思い返せば、全部が全部そうじゃないにしても当てはまる瞬間は確かにあった。

 

eastern youthのライブ中、 腕を上げたり歌ったり、体を揺らしながら演奏を聞いてるお客さん、様々。

対して僕は、何度それを解いても、気付けば無意識に腕を組んでしまってる。

 

きっと、むき出しの魂でぶつかってくるeastern youthの演奏に、どうしようもない自我が弱い自分を守ろうとしての仕草なのかもしれない。

巨大な魂の塊みたいな演奏を、真っ直ぐに受け止めるには勇気が要る。本能レベルでそう思うような演奏を、目の前にいるロックバンドは本気でぶつけてくる。

 

涙が出る。俺もこんな風に、ありのままで生きていきたい。

そう思うからこそ、eastern youthのライブって節目節目で見ておきたいものなんだ。

 

アンコールに応えての演奏。客出しのBGMが鳴って照明が付いたって、鳴り止まないダブルアンコール。それに応えて再度登場のeastern youth

 

初の極東最前線。イースタンはこれまでに日比谷野音でのワンマンやらも観たことがあったけど、やはり100回以上も続けている自身の企画。

「ゲストで出てくれたkurayamisaka、素晴らしい演奏をありがとう」

 

kurayamisakaの演奏に応えるように、全力で爆音をかき鳴らすeastern youthのその姿からは、ゲストへの最大限の敬意を感じる。

 

お互いがお互いへの愛とリスペクトを込めて、真っ正面からぶつかり合った極東最前線 、106回目。

その演奏にお互いへの敬意と、2組のロックバンドがそれぞれに持つ圧倒的な個性と迫力を感じた夜だった。

 

開演前、開場入りしたのが17時ちょっと前。ちょうど夕暮れ時だった渋谷の街はすっかり暮れて、クアトロを出た頃には暗闇だった。

渋谷の街の真ん中で、全てが終わった2時間とちょっとの後。

 

ひたすらに浴び続けた轟音と爆音の果てで、立つことすらやっとなほど、2組のロックバンドに圧倒されていたことに、会場を出たそこでようやく気付いたほどだった。

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「古着の古着図録」は日本のブログ。個人的熱狂を信じて生きることをモットーとする運営者によって執筆される。タイトルと記事の内容に乖離が生じつつあるが、これは好奇心を大切に、高鳴るする気持ちに正直でいるべきという運営者の考え方を尊重した結果だとされている。

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