伊東の「まぼろし博覧会」に行ってきた。人と文化への大きな愛を感じる泥臭いユートピア

小話

静岡県伊東市にある、まぼろし博覧会に行ってきた。

 

ここは少し前にYouTubeで、McGuffinのチャンネルを見て知った場所。

 

なんでも広大な敷地に全国から集まった大小問わずの珍品が並ぶ不思議な博物館のような場所。

YouTubeを見てるだけでもそのカオスな雰囲気には惹かれるものがあったけど、何よりインパクトがあったのはセーラー服を着た館長のセーラちゃん。

なかなかにユニークな方が館長を勤める場所なだけあって、すごく興味を持った。

 

ちょっと遠いけど、館長の「セーラちゃん」

ちょうどこの前、たまたま思い立ったが休日ってことで1泊2日で熱海に行ってきた。

そのタイミングで隣の市である伊東にある、前々から気になってたこのまぼろし博覧会にも行ってきた。

 

伊東駅からバスで30分。森の中に現れる「まぼろし博覧会」

レンタカーで行ったりしてもよかったけど、いかんせんペーパードライバーなので電車とバスを乗り継いで行くことに。

伊東駅前から出てる5番バスに乗って「梅ノ木平」バス停で降りる。

 

この路線のバスは1時間に1本しか出てないけど、途中山道っぽい感じ、それも雨だったからやっぱりバスで行ってよかった。

 

到着するとホームページにも載ってた、施設のオリジナルキャラクターが描かれた看板が迎えてくれる。

まぼろし博覧会はバス停を降りればもう目の前に。

 

自然と一体になりながらも広大な敷地であろうことが伺える外観と、駐車場の前にずらっと並んだメディア掲載履歴一覧。

僕が見たMcGuffinのYouTube以外にも、有名YouTuberのチャンネルやNHKにも出たことがあるらしい。

 

統一感があるようでないような、混沌の館内に惑わされる

大人1人でチケットを買うと、受付窓口の横にある売店から入場して展示の閲覧がスタートとなる。

場内の構成的に最後にまた売店に戻ってこれるんだけど、入って最初に見る売店には色んな、他じゃ見かけないものが置かれてる。

 

館長であるセーラちゃんのポスター (ほぼ全裸だった気がしなくもない)とか、岩下食品のキャラクターグッズ的なのもあった気がする。

 

なんでここに岩下食品の商品が、とか思ったけど、その疑問は売店を出るとすぐに解決した。

まず目に飛び込んできた巨大な聖徳太子の置物を筆頭に、圧倒的物量かつ混沌とした空気の中にずっと、岩下食品の宣伝BGMが流れてた。

 

どうやらスポンサーというか、そんな感じのポジションで協賛してるっぽかった。

エンドレスで流れ続ける「岩下の〜新生姜〜」っていう、祭り囃子的な曲調のそれが、行ってから数週間経った今でもずっと頭から離れず家でも口ずさんじゃってる。

 

これは館内の全体を通してそうだったんだけど、至るところに来場者?によって書かれた短冊が吊り下がりまくってる。

 

まぼろし博覧会の場内はいくつかのセクションに分かれてるけど、最初に入った大仏殿は色んなものが入り混じっててインパクトがあった。

 

抱っこして記念撮影をするためのセーラちゃんの紙パネルがあったり、チェキがあったり。

美脚神社をはじめとして小さな祠が複数あって、それらにも大量の小銭が。

 

色んな人たちの願いが入り混じった場所の最後に、圧倒的に巨大すぎる黄金の聖徳太子。

そのあまりのサイズに入った瞬間から笑っちゃったけど、歩き進めるにつれて近付くと改めてデカくてもう1回笑った。

 

どうやら奈良の大仏と同じ大きさらしいけど、こんなの元々はどこにあったのか。そしてどうやって運んだのかも気になる。

まぼろし博覧会は、どうやらこの場所のために作られたあれこれを展示してるってよりは、セーラちゃんがあちこちから引き取ったものを展示してる場所、って感じ。

 

それゆえありとあらゆるモノが大小問わずあちこちに展示されてる。

最初はただただ「統一感のないカオス」に思えてた。

 

けど、それは歩き進めるにつれて「カオス」の一言でまとめて受け取るにはあまりにもったいなく、何よりカルチャーや人への大きな愛を感じることになるのだった。

 

所狭しと並ぶぬいぐるみ、メルヘンランド、おばあちゃんの部屋

大仏殿を抜けると「メルヘンランド」と称されたエリアに到達する。

最初に入った大仏殿は巨大なビニールハウスみたいな作りをした室内だったけど、メルヘンランドは自然と一体になった屋外。

 

「メルヘンハウス」に並ぶぬいぐるみとマネキンたち

あちこちに謎のオブジェが並ぶ中に小屋がふたつ。

大量のファンシーなぬいぐるみが所狭しと並んだ「メルヘンハウス」と「おばあちゃんの部屋」

 

所狭しとモノが並ぶ「おばあちゃんの部屋」

おばあちゃんの部屋は、入ると圧倒的な物量のぬいぐるみや雛人形が置かれてる。

突如現れたそれを不思議に思う半分、どこか少し落ち着く気持ちにすらさせてくれる場所だったのは、それが本当に実在した「おばあちゃん」の部屋にあったものを、まるっと引き取った空間そのものだったからなのかもしれない。

 

人形や可愛いものを集めるのが好きだったおばあちゃんの実際の所有物を、亡くなったときに引き取ったというもの。

生前「博物館のような場所にコレクションを寄贈できたらいいのに」と語っていたおばあちゃんの夢を、こうした形で叶えているところにグッときた。

 

セーラちゃんの人への愛と器の大きさっていうんだろうか。4トントラックを引き連れてそれを引き取る桁違いの行動力が面白いくらいだけど、そんな背景があることを知って、どこか温かい気持ちになる部屋だった。

 

もはや希少となった日本の文化、ストリップ劇場への愛

その奥に進むと現れたのは、過去に営業してた本物の劇場の看板と見られるそれが入り口にある、ストリップ記念館。

 

ストリップは名前こそ聞いたことがあるものの、まだ実際には触れたことのない文化。

あらゆる文化が時代にそぐわないと言われたりしながら消えていく、その様子はいいものもあれば、何でもかんでも無差別に淘汰しすぎなんじゃないかと寂しくなるところもある。

 

詳しくは知らないけど、戦後くらいからずっと日本にあるようなイメージなのがストリップ。

数こそ少なくなれど、ここ数年は女性客も増えたりしながら若い世代にも受け入れられてるってイメージ。

 

そうやって文化が残っていくのは非常にいい傾向なんじゃないかと思う。

実際、僕もここでストリップの歴史に少し触れて、これから自分でも少し調べてみようと思ったし、何より来月くらいには実際に行ってみたい。

 

別エリアにあった「日本全国ストリップMAP」

というか、熱海に行ったときに何気なく散歩してたところにもあったあれがそうか、と後から気付いた。

なんとなくだけど、東京なら浅草か池袋なのかな。

 

浅草は伝統もありつつ、最近のセクシー女優さんも出演してたりと新しいことも次々と取り入れてる様子。

池袋は当時の文化を継承し続けてる生けるレジェンド的なイメージで思ってるんだけど、どうなんだろう。色々調べてどこかに行ってみようかな。

 

来場者の思い出寄せ書きノート

こうやって文化を残そうと発信する人がいないと、歴史あるそれらも徐々に途絶えてしまう。

ストリップという、数は少なくなりつつも文化としてある種重要なそれを守ろうとする愛が伝わってくる場所だった。

 

「まぼろし島」「ほろ酔い横丁」テーマ毎に分かれたエリア

まぼろし島ってエリアに入ると、どこかで見たことがあるようなおっさんのキャラクターが並んでる。

 

並んだ鳥居を潜ると現れたのは、これまでのどのおっさんよりも巨大なおっさん。カジュアルな気持ちで参拝できる。

 

ほろ酔い横丁には大きなペンギンのオブジェが大量にあって、かわいい。

隣接するエリアでは作家さんの作品を展示販売していて、ギャラリー的な機能も兼ねているのも素敵だなと思った。

 

色々なモノを引き取ったり寄贈される中で、集まったものでコンセプトを作れそうだったらそれらをまとめて新しい場所を作る、的な流れなんだろうか。

実際、新たに作ってる途中のエリアもちょいちょいあるみたいだった。

 

「エロ」や「カオス」で一括りにはしたくない、泥臭いユートピア

ほろ酔い横丁を抜けるとまた室内に。

ここにも戦争の歴史に触れられる、当時の時代背景を映した展示をはじめとした色々が詰まってた。

当時の娯楽とか、文化を感じさせるモノの数々。

 

ここでも既に閉館した元祖国際秘宝館の展示物を引き取って展示してる箇所があったり。

語り継がれていくべき文化を絶やさない、そんな姿勢も垣間見えた気がした。

 

全国から色々なモノが集まった場所。確かにこれだけ色々なモノがあればイロモノ扱いもされるだろうし、というかまあそれでもいいんだろうし。

ただ、こうやって綺麗なだけじゃないモノが様々集まった不思議な空間には、きっとどこかで正面から救われている人もいるはずで。

 

館内のあちこちに吊るされた短冊に書かれた願いは冗談半分のものもあれば、神社でお参りをするのと同じような気持ちで書かれたものだってきっと沢山あるんだと思う。

 

「エロい」とか「カオス」って面白おかしく感じるのだってもちろんオッケー。

そこへ行って、何をどう感じるかなんてのはきっとその人次第。

 

まあ、確かにエロは強烈だし面白いと思う。

それだけ人を惹きつけるその根底には、それ自体が人間の誕生とか生命の根源に強く根ざしてるものだからなんだろうけど。

 

しかし僕はこの場所に、ただそれだけで一括りにはしたくない、人や文化に対する強くて優しい愛情をどこか感じた。

「泥臭いユートピア 大事じゃないですかね」

セーラちゃんがメディアに出演した際の一コマなんだろうけど。僕はこの言葉にも何だかグッとくるものがあって。

 

綺麗なものが全てじゃない、良い訳でもない。

人間らしさとか泥臭さ、そういうのがないと完璧さみたいなものには、僕は個人的にはあまり惹かれなくて。

かといって、正直に言ってみればまぼろし博覧会を真っ直ぐに「大好きな場所」って言うような、ストレートに惹かれているタイプでもなかったりもするけど。

 

ただ、この場所には確かに人と文化への大きな愛を感じた。

なんというか、上手に綺麗に生きなくたっていいんだよって言われているような、そんな気さえしてくる場所。

世の中が綺麗なものだけになっちゃきっと面白くないし、こういう場所が絶対に残っていて欲しいと僕は切に思う。

 

冒頭でも紹介したMcGuffinの動画とか、あとは記事を書きながら見つけたBRUTUSによるセーラちゃんへのインタビューも心に響く内容だった。

動画を見たり、記事を読んでみたりして、何か感じるものがあったら、ぜひ足を運んでみてほしい。

そうして訪れてみると、きっと忘れられない経験になると思う。

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